びょうにん(3)
そんな事を考えつつ今日三回目
「人間は感傷的な生き物 」
って言葉を思い出す。
合コンはうまくいったのか失敗したのか 四人はぎこちないままレジに向かう。
幹事らしい男の子が申し訳なさそうに一人で会計を済まそうとする
もう一人の男の子がそれを制止する。女の子は一人は携帯をさわっている
もう一人は所在なげに空をみている 。
思わず携帯をさわっている女の子に注意しそうになる。
最後にしようと決めたタバコを吸う。
なんてまずい。
人生はクールだ。しかしスマートじゃあねぇ。 二度と戻らない「今」を眺めながら
レジに向かう前にパソコンを覗き込んでいる青年にコーヒーをおごる。
青年はびっくりするわけでもなくお礼をいうわけでもなく
じっと俺の目を見据えて誰にともなく つぶやく
「お疲れ様」
その時の俺は相当に変な顔だったに違いない。
二人分のコーヒーと一人分のワイン一人分のチーズの料金を払って店をでる。
外は小雨だった。
吸うべきタバコはもうなく。歌うべき歌はもうなく。
明日は幻想にしか思えなかった。
小雨が降り注ぐ 、降り注いでいるのは 俺にではない。
そんなことはもうどうでもいい。この涙は雨ということにして 歩きだす。
こういう雨はスマートだ。